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山の大家族 2月   読売新聞(夕刊)連載11回目 2005/2/25 


夕食 一番大切な時間

 春近し、とはいえ山あいの矢部村では、まだまだ寒い日が続きます。この時期、子供たちの通学もなかなか大変です。

 小・中学校まで、片道四、五キロ余り。小学校はスクールバスで通学ですが、中学校へ通う二女と長男は、道路が凍てつくなか、自転車通学です。行きは下りでよいのですが、帰りは当然の事ながら、ずっと上り。しかも、最後の一キロは、急勾配が続き、自転車を押して、約一時間かけて帰ってきます。

 夕食の準備を終えると、子供の帰りを待つばかり。しかし、暗くなっていつもの時間に戻らないと、だんだん心配になり、「ちょっと甘いかな」と思いながらも、途中まで迎えに行くことも。

 迎えに出ると、街灯も無い、真っ暗な道を、おしゃべりしながら、楽しそうにのんびりと坂道を上ってきています。その姿を見ると、安心するが早いか、「早く帰って来いよ」と小言も言いたくなりますが、これも、子供にとっては、良い思い出になるのかなあ、と思っています。

 いよいよ夕食。子供たちの声や表情で、その日の体調や学校での様子、心の動きなどがそれとなく伝わります。

 農家に決まった休みはありませんし、お茶摘みシーズンともなれば、子供たちに構ってやれないだけに、夕食時に過ごすひと時が、我が家が積み重ねてきた、一番大切な宝物のような気がします。

                            (政)

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