大きな乗用田植え機は山の田んぼでは、使い物にならない。一歩一歩、歩いて田を植える。 |
|
深山の清流米と香り米の話 |
福岡県八女郡矢部村の標高500〜600メートルの山間の里で、先祖代々受け継がれてきた棚田で米を作る。
これでもか!というほどの山の急斜面に張り付く小さな棚田。
かろうじて田んぼの姿をしているものの、米作りの本場から見れば、ままごとにしかみえない我が家の田んぼである。
そんな田んぼで、今年74歳になる父は、命がけで米を作っている。
命がけなんてオーバーな表現だと笑う方もいるだろう。しかし、笑い事ではない。
作業中、機械もろとも下の田んぼに転落したら・・・・、まさに命がけ。
また、田んぼが狭すぎたり、作業機械を運ぶ道がなかったりするから、過酷な手作業も多い。
|
|
|
|
|
種まきも手作業。機械を使えるのはほんの一部分。 |
|
父は長年、そんな田んぼで、命を削るように米を作ってきた。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
父から夫へ受け継がれるだろう棚田は、少しずつ面積を減らし続けている。
私が嫁いだ頃の面積と比べると約半分になった。主作物のお茶の管理が忙しく、夫は田んぼまでは、なかなか手がまわらない。
夫が田んぼに姿を見せるのは、田植えの時の苗配りと稲刈りの時に、田んぼから米袋を運び出す時くらいである。
父は、そんな夫に何も言わず、ただ苗を植え、稲を刈る。
|
|
|
|
|
|
|
父の右肩のじん帯は切れている。肩より上に腕を上げると、痛むらしい。
夕食のときに、父の重い口から「肩が痛い」と時々こぼれる。
学校では、やんちゃばかりしている息子も家では口数が少ない。無口な父や口下手な夫の姿を見ているのかもしれない。
手伝うときも言葉すくなに手伝う。試験中でも家の仕事の手伝いをすることに容赦はない。
どんなに「勉強しろ」と怒っても絶対にやらない息子も、手伝いはきちんとやる。
もう力仕事は、息子にかなわなくなってしまった。 |
|
|
|