タクシー


 7月、まじめな用件で炎天下の福岡市へ出かけた。久しぶりの都会は、ただただ暑かった。

 ひょんなことから、農家のための「インターネットを活用した販売戦略」という研修会に参加することになり、その講師の先生をホテルから会場まで案内したりしたため、普段はめったにのらないタクシーに3回も乗った。
 
 たった5〜10分の道のりだったけれど、タクシーの運転手さんていうのは「すばらしい!」と思った。3人ともそんな短い間にいろんなことを話してくれ、見事に自分を表現してくれる。(・・・・正反対の自分を反省する。)

 ホテルから会場へのタクシーで運転手さんに、講師のTさんが「北海道から来たけど、福岡は暑い。すみませんが冷房を効かせて欲しい」と話されると、「夕食はどこでするんですか?」「安くておいしい店をしっているから案内してあげますよ」と気さくに話してくれる。

 愛煙家のTさんが「タバコを吸ってもいいか?」と聞けば、「だいたいタクシーでタバコが吸えないなんておかしいよ(▼▼) サラリーマンは、タクシーか喫茶店くらいでしかタバコが吸えないんだから・・」という返事にタバコを吸わない私も「なるほど」と思う。いつもは煙たいはずのタバコの煙もそのときは煙たくなかった。

 夕方、安くて美味しいお店に案内してもらおうと、気のいいお世話好きの朝乗ったタクシーの運転手さんに連絡してみたけれど、ちょうど他のお客さんを乗せているらしく、結局別のタクシーに乗った。

 ホテルから夕食へ向うタクシーで
「どこか安くて美味しいお店はないですか?」とたずねた。

 ホテルでは、中洲辺りが良いと言っていたことも話したが、「いやー自分も何度か行ったことがあって、関西や関東から来たお客さんにも紹介している店があるから・・そこへ」  「自分も行ったことのあるお店でないと安心して紹介できないですよ。」という話に「ではそこのお店へお願いします。」と答えた。

 途中で無理矢理に割り込んできた車に何度もクラクションを鳴らす運転手さん。
今までの温厚な話と結びつかないような鳴らし方でちょっとビックリしたけど、「お客さんが乗っていなかったら降りていってぶん殴ってくるとこでした・・・」と話す時には、また温厚な口調の運転手さんに戻っていた。と言うより戻していたのかもしれない。
 
 紹介されたお店に着くと、外観も重厚なほど立派なつくりの活き魚割烹と言うのだろうか・・・きっちりとしたいきのいいお店だった。そういえば、あの運転手さんが気に入りそうな律儀そうなお店である。お店の横にある直営の明太子屋さんも「今ではめずらしい国産だ」と言っていた。

 夕食が済みホテルへもまたタクシーに乗った。今度は少し若くてちょっと軽そうな感じ・・・(ごめんなさい)。乗る早々赤信号を平気でのんびりとわたっている若いカップル。「このやろう!」と言いながらも窓を開けて怒鳴ったりはしない。

 「昔はタクシーの運転手とや○○は怖がってたのに、今じゃタクシーなんて誰も怖がらないからなあ。」・・・でも昔はほんとに怖かったことなど話してくれた。ラジオからはダイエー戦の中継が流れていて、6対0で苦戦していると嘆いていた。

 この後、ホテルへ入っていかれるTさんを見送った後、山の上の我が家へ2時間かけて帰る。旦那は冷たい生ビールを楽しんだため、私が2時間運転する。

 タクシーの運転手さんみたいにはやはり行かない。ほとんど黙ってタクシーの運転手さんのことを考えながら
家路を急いだ。

 
 

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